大学・大学院で学ぶ社会人女性が増えています

「社会人入学について」杉藤 重信 教授

アメリカ合衆国やオーストラリア連邦の大学事情

 アメリカやオーストラリアの大学のキャンパスでは、幅広い年齢層の学生が行き交っている。私は、オーストラリアの大学に研究交流のために毎年のように出かけるが、参加した授業では、半数近い学生の年齢層が日本に比べて高いように見受けられた。私の専攻分野は文化人類学で教育学領域ではないのだが、国際比較の視点から大学における入学者の多様化について考えてみることにしたい。

 裏付け資料としてオーストラリアの統計局(ABS)が発表したデータをみると、私の印象は間違いではないことがわかる。2003年におけるオーストラリアの(注)高等教育機関における学生の年齢別分布は、19歳未満が22.6%、20歳から24歳が35.5%、25歳から29歳が14.6%、30歳以上が27.3%で、25歳以上の学生はあわせて41.9%である。

 一方、アメリカでは高等教育機関に入学している学生の年齢層は、図1に見るとおりである。全体的には、高等教育機関への入学者の数は大幅に増加する傾向にあり、2010年には、1970年の2倍以上となる。年齢別には1990年をピークとして、30歳以上の学生の数は増加しており、現在のところ、高等教育機関の学生のうち18から21歳が4割、22歳以上30歳未満が3割、30歳以上が2割といった傾向が定着しているように見える。ここでも、オーストラリアと同じく、日本における社会人カテゴリーにはいるような学生数の割合の多いことがわかる。

(注)高等教育機関とは、たとえば、日本の場合、「大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専修学校(専門課程)」のことを示す。オーストラリアとアメリカもほぼ同等である。

アメリカ合衆国における高等教育機関在籍者の年齢別・年次別推移<図1>

日本の大学事情との相違点

 もちろん、両国と日本の高等教育機関に対する考え方やシステムが異なる。日本においては、18歳人口が大学入学年齢であり、各大学ともに少子化傾向の継続にもかかわらず18歳人口の動向が主たる関心事であって、大学間の受験者獲得のための主要な目標課題はあくまでも、そちらである。文部科学省では、大学入学対象年齢以外の教育課題は、「生涯教育」あるいは、最近では「リカレント教育」の名称が使われる。社会人が再入学して資格関連を強化するあるいは業務内容の強化を図ることを教育課題としている。

 日本にない枠組みは、高等教育機関への就学者のカテゴリーが「フルタイム」か「パートタイム」か、という区分である。前者は、文字通り、修学年限をとおして就学する学生を指しているが、後者の場合、学期、学年単位、あるいは、科目毎に、各自の事情に応じて就学する学生の存在をさしている。一般的にオーストラリアやアメリカでは、大学入学資格を得たからと言って、18歳になった時点で大学進学するとは限らないし、就職し数年たって改めて大学入学を目指すケースが存在する。パートタイム学生のメリットは、経済的な事情も含めて、多様な就学形態を可能とするのである。たとえば、大学に入学したとしても継続して修学年限まで在学するのではなく、中断して就職し時間を経て改めて就学するという者や、別の大学で学位を取ったが別の分野に関心を転じて再入学して学ぶ。これらのパートタイム学生の就学時の年齢は様々である。すなわち様々多様なライフスタイルのなかの選択肢として、高等教育機関における「学び」が組み入れられているわけである。

社会人入学を考える

 日本の大学は、18歳人口を対象年齢にしてカリキュラムをはじめとした様々な制度を整えてきた。しかし、文部科学省の中央教育審議会大学分科会の配布資料によると平成19(2007)年には大学の入学者数と志願者数が均衡すると予測されており、これは、従前の試算より2年前倒しとなっている。日本の18歳人口は平成4年に約205万人のピークをすぎた後、減少の歯止めがどこでとどまるのか、明らかではない。各大学としては、大学のカリキュラムや教育内容を改革して、対象人口の拡大を図ろうとしている。たとえば、国際化を名目にして留学生の受け入れを行い、生涯教育やリカレント教育の立場から、入学対象者の年齢巾の拡大を図ってきた。しかし、留学生数の増加を除いて、大学入学者の多様化は進んでいないのが現状である。

 多様化が進まない事情は、ひとつに、それぞれの大学の努力で片づく問題ではないものがあることである。たとえば、学年や学期、あるいは、科目によって大学を選択できる幅広い就学形態が必要であるし、そのための制度的対応が必要である。両親の扶養を受ける18歳人口を対象とした奨学金制度にはない新たな奨学金システムも必要であろう。さらに、たとえば乳幼児保育施設が学内にあれば、子育て途中の母親が就学する事を容易にするであろう。

 一般に、学ぶことに対する人々の関心は高い。各種のカルチャーセンターや市民講座、あるいは、資格獲得のための学習も盛んである。一度は大学を卒業した者が改めて学び直しを志すことも増えているようである。すでに長期にわたって生涯教育の重要性は取り上げられてきており、背景的な状況は整いつつあると思われる。そうした意味で、多様な人生の選択肢の中であらためて社会人入学をして大学で学ぶことの意味と意義は大きいと思われる。

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